子どもをほめよう大会

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全国生涯学習まちづくり協会理事長 福留強公式ブログ (生涯学習 まちづくり NPO)
new_17.gif【列島めぐりあい】
全国生涯学習まちづくり協会 理事長 
『福留 強 公式ブログ』

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子どもをほめよう大会

地域ぐるみで青少年を育てる「子ほめ条例」の現状と実践上の課題

聖徳大学教授
全国生涯学習まちづくり協会副理事長
清水 英男

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1.青少年の健全育成と子ほめ条例の意識
(1)青少年教育の今後の方向性
 昨今の我が国の青少年教育は、〔ゆとり〕のなかで全人的な〔生きる力〕を育むという観点に立って改革がすすめられている。この〔生きる力〕は、平成8年7月の中央教育審議会第一次答申「21世紀を展望した我が国の教育の在り方について」の中で、これからの教育の在り方の基本的な方向として提唱されたのである。そして、その育成は、大人一人ひとりが、社会のあらゆる場で取り組んでいくべき課題であると提言している。さらに、平成13年には、学校や地域でのボランティア活動など社会奉仕体験活動や自然体験活動などの体験活動を充実するため、学校教育と社会教育の連携が容易に行われるよう、学校教育法や社会教育法の一部が改正されたのである。
 これからの青少年教育は、家庭教育と学校教育と社会教育が、自らの役割を確実に果たしながら相互の連携を深め、また、目標を共有する分野では、三者が一体となって取り組む(融合)システムをつくり効果的に運用することが主な課題といえよう。その一方策として、子ほめ条例の制定と効果的な実践活動を提唱したい。

(2)子ほめ条例の概要
 子ほめ条例とは愛称である。正式には、市町村が児童生徒を表彰する条例(以下、実践活動も含めて「子ほめ条例」という)であり、「国分寺町児童生徒表彰に関する条例」など、条例を制定した地方公共団体名を冠している、子ほめ条例を我が国で最初に制定したのは、栃木県の国分寺町であり、1985年(昭和60)10月21日であった。2002年(平成14)3月時点で、13の町村が制定している(当協会の調査結果)。
 この子ほめ条例は、地方公共団体の青少年に対する思いや教育理念に基づき、多種・多様な形態・方法などによって展開されている。それらの共通点としては、該当する地方公共団体に居住している児童生徒全員を義務教育終了時までに必ず表彰し、その表彰者が首長ということである。また、地域と学校が連携を蜜にしていることや表彰状とメダルが贈られている。
 被表彰児童生徒の推薦は、学校推薦と地域推薦が一般的である。また、地域からの推薦を学校でまとめるという取り組みも行われている。つまり、教師や地域住民が、児童・生徒の優れた個性や能力、社会性などを家庭や学校、地域社会の中で発見し、学校長や公民館長などに推薦する。その推薦に基づき、被表彰者選考委員会や関係機関などの協議を経て、首長に内申し、表彰者が決定されるのである。その表彰内容は、奉仕賞、健康賞、親切賞、体育賞、学芸賞、勤労賞、ユーモア賞、スマイル賞、特技賞など地方公共団体によって様々である。さらに、一人の児童生徒に対する表彰回数も1回から4回まで、また、表彰式も年1回から5回程度など多様である。

(3)子ほめ条例の意義
 次代を担う青少年の健全育成は、地方公共団体の重要な政策課題となっている。特に、地方公共団体は、青少年に〔生きる力〕をはぐくむために、学校教育の充実をはじめ、家庭教育や社会教育の振興に力点を置いている。子ほめ条例も、青少年の健全育成を主な目的としている。しかし、従来のパターンと違うのは、大人である地域住民や教師が子どもを見守り、よさを発見し、“まち(市町村)”全体でほめることにある。
 子ほめ条例の意義は、常に、地域の大人たちが学校とに連携を密にし、子どもたちに温かい心で接しながら見守り、良さを見つけ積極的にほめることを通して、「地域の宝」である子どもの成長・発達を支援するという、人間らしい生き方ができることにある。また、子どもたちは、自分のよさを多くの人々の前でほめられることによって、ほめられる個性や社会性などをもっている自分に自信や誇りをもつことができる。そして、これからの人生をより善く生きるための動機ともなり得るのである。さらに、大人と子どもの相互信頼に基づいた好ましい人間関係が醸成され、地域により深い誇りと愛着をもつことが大いに期待できる。つまり、学校教育と社会教育が連携し、子どもと大人の心が豊かになる地域ぐるみの青少年の健全育成といえよう。

2.子ほめ条例の成果
 子ほめ条例は、制定町村の目的に即した実践活動が展開されており、数多くの成果が明らかにされている。ここでは、2003年3月に全国子どもをほめよう研究協議会などが主催し大分県前津江村で開催された「第1回全国子どもをほめよう研究大会―子ほめフォーラムIN前津江」での分科会の発表や資料などに基づき紹介する。
(1)児童生徒(表彰者)に与える好ましい影響
 前津江村の花田紀子委員長は、「被表彰者である児童生徒は、表彰状が読まれてはじめて自分の『よさ、宝物』を発見する。受賞後の感想文の中に、その時の驚きや感動などがえがかれている。また、感想文に共通していることは①当たり前のことをしているのに②地域の人やおとなの人は、よく見てくれている③これからもがんばりたい」と述べている。さらに、家族賞を受賞した小学4年生の感想文「私が選ばれるとは思っていなかったのでとてもうれしかった。お父さんとお母さんに『家族賞をもらったよ』と言ったら、お父さんが『あんたのが一番価値のある賞』といった」という内容を紹介し、「お父さんの言葉によって、子ほめで表彰された喜びが更に2倍にも3倍にもなってこの子の心を十分に満たしているのがわかります。親のひとことの大切さを、ほめることの大切さを感じます」とコメントしている。

(2)受賞後(成人式)の被受賞者への影響
 山口県錦町の谷彰前教育長は、子ほめの効果を調査するために、1998年(平成10)と2000年(平成12)の成人式の時に実施したアンケート調査の結果を発表した。例えば、「平成12年度の調査結果として、7割以上の成人が子ほめ条例を続けてほしいと回答していることや、68%の成人がどんな賞を受賞したか、よく覚えていて、心に残っていることがわかった。さらに、73%の成人が受賞を自分の人生のプラスになったと思っている」ことなどである。

(3)地域の大人への影響
 前津江村の被表彰者の推薦は、学校推薦と地区推薦に分かれている。その表彰者の地区推薦率は、2000年度(平成12)では小学生68.6%であり、2001年度(平成13)は43.3%であった。しかし、中学生では2000年度(平成12)は24.4%であったのが2001年度(平成13)は59.3%となり、2002年度(平成14)年度は79.6%となっている。この時点では、小学生の2002年度(平成14)は未定であったが、かなり高い割合となることが予測されていた。また、推薦者である女性は、「…(ほめるという)こんなちょっとしたことを忘れたり、気づかなかったりする時代です。これが今、前津江村が求めている『ほめて大きく育てましょう。大人も心豊かになりましょう。ともに成長しましょう』ということなのですね。今後も子どもたちにしっかり目を向け、地域の子どもたちが一人残らず表彰されるよう推薦しようと思っています」と述べている。〔「まえつえの宝箱」前津江村教育委員会p20。()内は筆者の意訳である。〕さらに、この「第1回全国子どもをほめよう研究大会」の企画や運営などには、村民が実行委員会を組織し、前津江村の全人口の約1割にあたる160名の村民がボランティアとして参画し、活躍した。
 これらのことは、地域の大人が一人ひとりの子どもの行動に注目しながら、その子どもの個性としての「よさ(宝)」を発見し、村をあげて表彰するという機運が、年々高まりつつある証左といえよう。また、地域の大人や保護者は、子どものよさを発見することを通して、子どもが誇れる大人になる必要性に気づき、実践していることがうかがえるのである。

3.子ほめ条例の課題
 前述した国分町や前津江村、錦町をはじめ、岡山県鏡野町や鹿児島県東町の発表や資料などから、子ほめ条例や実践上の主な課題は、次のようなことがいえよう。

(1)表彰の分野と価値について
 子どもたちは、「自分がどの分野で“よさ”を認められ表彰されたのか。また、表彰の分野に上下関係があるのか」ということに関心をもっている。このような表彰の分野と価値については、絶えず評価を行い、広報活動を充実することが課題といえる。つまり、児童生徒一人ひとりの持っている“よさ”を表彰できるようにする必要がある。また、どの賞も同じ価値があることを、子どもたちや大人たちに理解させることが極めて大切である。さらに、子どもたち一人ひとりが納得できる分野で表彰されなければならないということである。

(2)表彰の時期
 表彰を行う時期は、受賞についての納得や感動などに大きな影響を与えている。例えば、「同級生が表彰されているに自分は表彰されない」という焦りを感じ、自信を消失することなどである。また、表彰が早すぎると受賞者の表彰分野の活動が息切れすることもある。
 そこで、子ほめ条例制定の趣旨を踏まえ、地方公共団体の実卿や子どもたちの実態に応じて、適切な表彰の時期を決定することが課題となる。つまり、子どもの“よさ”を発見したら、すぐに行うのか、学期ごとか、年に1回か、小学校の6年間在籍しているいずれかの学年で表彰すればよいのか、また、小学4年生や6年生など学年全員を一斉に表彰することが効果的か、ということなどを調査研究し、決定することである。

(3)被表彰者の推薦方法
 被表彰者の推薦方法は、地域の大人が推薦する方法と学校が独自に推薦する方法が栄養されることが望ましい。このような推薦方法は、地域の大人や教師がすべての子どもを「地域の宝」として見守り“よさ”を発見するプロセスの中で、学社連携や融合が盛んになることや、子どもたちのモデルとなれるよう自らの生き方を振り返るという効果もあることがわかった。子どもたちも、保護者からではなく、地域の大人や学校の先生から推薦されたことに、感動し、感激を新たにするからでもある。
 今後は、これからの推薦方法がマンネリ化しない改善工夫が課題といえよう。例えば、地域推薦が子供会育成会の役員や民生児童委員なかせになることや、学校での表彰の延長として捉えることなどを抑止し、絶えず推薦制度が「地域ぐるみで子どもの“よさ”を認めあう」という原点を踏まえ、実効あるものとする配慮が必要である。

(4)表彰の方法
 子ほめ条例は、地域ぐるみですべての子どもの“よさ”を認めあうことに意義がある。その表象的なこととして、子ほめ条例を制定し、その条例に基づき住民の代表である首長が子ども全員を表彰するのである。また、多くの子どもたちや、地域住民が参画する会場で表彰が行われている。しかし、諸般の事情から、この方法が形骸化され、例えば、助役や教育長、校長が表彰状とメダルを授与するような場面も見受けられるようになっている。今後、このような形骸化が起こらぬよう留意することが課題といえる。

(5)効果の測定
 子ほめ条例の効果は、受賞者の感想文をはじめ、被表彰者の選考委員会の委員や推薦者の感想などによって行われているのが一般的である。しかし、受賞者の変容度などを明らかにするためには、これらのことに加えて、受賞者の人生という時系列にわたった継続的な調査が必要である。例えば、錦町での成人式における調査や国分寺町での20歳以上の受賞者に対する事例研究などのことである。
 今後は、小学生期、中学生期、高校生期、青年期、成人期など、人生の各期における子ほめ条例の影響を調査研究し、その結果を子ほめ条例の改善充実に役立てることが課題といえよう。

4.子ほめ条例の波及への期待
 子ほめ条例は、地域ぐるみで青少年を育成するうえできわめて意義のあることといえる。また、実効ある学社連携・融合の可能性を持っている。さらに、“まち(市区町村)”全体で子どもを見つめ、ほめるということは、地域の教育力を高め、新しいコミュニティの形成や子どもを主役にした生涯学習によるまちづくりにも結びついているのである。そして、なによりも、子どもにとっては、大人を信頼し、地域に誇りを持つことができ、大人は地域の子どもを誇らしく思い、自らの生き方を確立する動機となるのである。このような子ほめ条例が多くの地方公共団体で制定され、実をともなった青少年の健全育成として、地域ぐるみで生き生きと展開されることを願っている。


調査研究報告

2009年11月23日(祝)
「子どもをほめて育てる研究会in山梨」山梨県山梨市万力の山梨市民会館


過去の調査研究報告